2023年でデビュー45周年を迎えたサザンオールスターズ。それを祝して、1978年から現在に至るサザンの全作品からシティポップ的観点で楽しめそうなものを25曲厳選してみました!
- サザンの全作品を振り返って
- 01. 別れ話は最後に(1978年)
- 02. 茅ヶ崎に背を向けて(1978年)
- 03. TO YOU(1980年)
- 04. Hello My Love(1981年)
- 05. ステレオ太陽族(1981年)
- 06. 女流詩人の哀歌(1982年)
- 07. シャッポ(1982年)
- 08. EMANON(1983年)
- 09. サラ・ジェーン(1983年)
- 10. 恋のメモリー・三昧編(1983年)
- 11. よどみ萎え、枯れて舞え(1984年)
- 12. あっという間のTONIGHT(1984年)
- 13. Happy Birthday(1985年)
- 14. Please!(1985年)
- 15. 女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)(1989年)
- 16. Good Luck, Lovers!(1991年)
- 17. 恋の歌を唄いましょう(1996年)
- 18. 君に贈るLOVE SONG(1996年)
- 19. 夏の日のドラマ(1999年)
- 20. チャイナムーンとビーフン娘(2000年)
- 21. DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~(2006年)
- 22. ダーリン(2007年)
- 23. すけっちぶっく(2008年)
- 24. 潮風のエトランゼ(2009年)
- 25. ベガ(2011年)
- 次なるサザン選曲企画
サザンの全作品を振り返って
「シティポップ的観点」といっても少々曖昧なのでもうちょっと具体的に言うならば、AOR、ブラックミュージック、ブラジル/ラテン音楽的要素のあるものを中心に選曲しています。サザンだけでも膨大なのに、どうせやるなら徹底的にということで桑田佳祐さんと原由子さんのソロ作品も対象にしてみました。結果的にシングル表題曲は4曲しか入らなかったので、サザンの隠れた名曲集としても楽しんでもらえるのではないかと思います。
それにしても、45年に及ぶサザンの長い歴史と膨大な数の楽曲と向き合いつつ強い信念をもって選曲していく作業はたいへん厳しいものがありました。単に「サザンの良い曲好きな曲を集めました!」みたいなプレイリストと一味ちがうセレクションであると受け止めてもらうには、一体どうすればいいものか。正直、それが達成されているかはわかりません。
そんなわけで皆さんがどうお聴きになるかはわかりませんが、ざっと確認してみたところ各サブスクリプションサービスの「サザンの隠れた名曲集」「通のためのサザン」的なプレイリストとのかぶりもほとんどないようなので、サザンの楽しみ方としてそこそこ良い提案はできているのではないかと自負しています。もちろん「ぜんぜんシティポップ感ありません!」というのであればそれはそれで甘んじて受け入れます。
本題に入る前にちょっとイントロダクション的に駄話をさせてもらうと、個人的にサザンは『ザ・ベストテン』で「勝手にシンドバッド」を聴いたときから現在に至るまでずっと好きですが、特に大好きなのが今回のプレイリストにも入れた「女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)」。1989年の作品、通算25枚目のシングルです。
この曲は、当時フジテレビで放送されていた『夢で逢えたら』のオープニング曲でした。『夢で逢えたら』は1988年10月から始まったバラエティ番組で、出演がダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコさん、野沢直子さん。いわゆる「お笑い第三世代」、漫才ブーム以降の新しい芸人さんの台頭を象徴する番組です。
『夢で逢えたら』は最初関東ローカルで木曜深夜2時に放送していましたが、1989年の4月から全国ネットに移行して、それに伴って土曜日夜11時からの放送になりました。そのタイミングで番組のテーマソングに選ばれたのが、このサザンの「女神達への情歌」だったわけです。
これが「ミス・ブランニュー・デイ」のようなノリのいい曲でもなければ、「Ya Ya(あの時代を忘れない)」みたいなセンチメンタルなバラードでもない。ファンキーなリズム&ブルース調のミッドテンポの曲で、歌詞はよく聴くとAVを見ている男の妄想を歌っている模様。要は、一般受けとは程遠い曲でした。
でもまあこれが衝撃的にかっこよかったのです。しかもそんな曲をシングルにして、かつテレビ番組のテーマソングになっているところにもしびれました。この曲のサザンのかっこよさとさっき話したお笑い第三世代の台頭、明らかにいままでと違うタイプの新しい芸人さんが登場したこととの興奮が相まって、いま自分はものすごいヒップなものに触れてるんじゃないか、という気にさせられたのです。それは本当に忘れられない体験になっています。
45周年ということで軽く思い出話をさせてもらったところで、さっそく「シティポップ感覚で聴くサザンオールスターズ」、計25曲をリリース順に紹介していきたいと思います。
01. 別れ話は最後に(1978年)
1stアルバム『熱い胸さわぎ』収録。貴重なボサノバ調。デビューシングル候補だったという秘話がありますが、もし「勝手にシンドバッド」ではなくこちらが選ばれていたら歴史は変わっていたかもしれません。
02. 茅ヶ崎に背を向けて(1978年)
引き続き1stアルバム『熱い胸さわぎ』より、「気分しだいで責めないで」のカップリング曲。原由子さんとの初のデュエットでもあります。現代にイメージするシティポップ感に割と忠実な曲調かと。ちょっとクイーンの「Misfire」に似ているような気もします。
03. TO YOU(1980年)
3rdアルバム『タイニイ・バブルス』収録。人気曲ですね。やはりルパート・ホームズの「Escape (The Pina Colada Song)」がモチーフなのでしょうか。
04. Hello My Love(1981年)
4thアルバム『ステレオ太陽族』収録。AOR調で始まるもののアレンジがディキシーランドジャズ。サザン流の「サバンナバンド歌謡」(ドクター・バザーズ・オリジナル・サバンナ・バンド)としても聴けると思います。
05. ステレオ太陽族(1981年)
続けて4thアルバム『ステレオ太陽族』より。1分半の短い曲ではありますが、メロウディスコ調の佳曲。まさに「シティポップなサザン」のジャストなイメージではないでしょうか。なんとか引き延ばしてロングバージョンを作っていただきたいところ。
06. 女流詩人の哀歌(1982年)
5thアルバム『NUDE MAN』収録。『ステレオ太陽族』の「素顔で踊らせて」に続くユニ・チャームCMソング。当時のコンテンポラリーなソウルミュージックを参照している印象です。
07. シャッポ(1982年)
16thシングル「Ya Ya(あの時代を忘れない)」カップリングのサザン流ディスコ。これこそシティポップ文脈で再評価すべき曲でしょう。
08. EMANON(1983年)
18thシングル。ここらあたりでシングル表題曲を入れてみました。サザンのシングルのなかでも特に売れなかった曲のひとつ(オリコン最高24位)ですが、「アーバンなサザン」としては歴代トップレベルかと。1980年代前半のサザンは大きなシングルヒットをあまり出せていなかったのですね。
09. サラ・ジェーン(1983年)
6thアルバム『綺麗』収録。アース・ウィンド&ファイアー「That’s The Way of The World」にインスパイアされたようなアーバン&ソウルフルなミッドテンポ。
10. 恋のメモリー・三昧編(1983年)
原由子さんの2ndアルバム『Miss YOKOHAMAADULT』より。先ほど「Hello My Love」を「サザン流サバンナバンド歌謡」と評しましたが、こちらはおそらく「I’ll Play the Fool」を参照した直球なサバンナバンドのオマージュ。
11. よどみ萎え、枯れて舞え(1984年)
7thアルバム『人気者でいこう』収録。パッと聴きでは歌謡感が前に出ている印象ですが、演奏はファンキーかつアーバン。間奏部分などはかなりおしゃれ。
12. あっという間のTONIGHT(1984年)
続けて7thアルバム『人気者でいこう』より、こちらはサルサ調。サザンのラテンタッチの曲は情熱的なものが多い中、これはかなり洗練されています。
13. Happy Birthday(1985年)
8thアルバム『KAMAKURA』収録。大胆にシンセサイザーを導入したアルバム。この曲は同じ1985年にリリースされたスクリッティ・ポリッティ『Cupid & Psyche 85』の影響を強く感じさせます。
14. Please!(1985年)
引き続き8thアルバム『KAMAKURA』より。Steely Dan風の気だるいAOR。最後にクリーム「Sunshine of Your Love」のリフが飛び出す!
15. 女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)(1989年)
25thシングル表題曲。この曲については冒頭で触れた通り。「Please!」のあとに聴くとスティーリー・ダンっぽくも聞こえますね。
16. Good Luck, Lovers!(1991年)
原由子さんの3rdアルバム『MOTHER』収録。ここから20曲目まで桑田さんお休みです。原由子さんは竹内まりやさんと同じ1978年のデビューですが、この曲を聴いていると同じ時代の空気を吸って育った印象を受けます。SUGAR BABEの遺伝子も感じます。
17. 恋の歌を唄いましょう(1996年)
12thアルバム『Young Love』より。個人的に原由子さん作品のベストのひとつ。ちょっと太田裕美さんっぽい気も。
18. 君に贈るLOVE SONG(1996年)
38thシングル「太陽は罪な奴」のカップリング曲。ドラムの松田弘さんが作詞作曲ボーカルを担当しています。サマーブリーズ感とフリーソウル感あふれる、これぞ隠れた名曲でしょう。フルートやトロンボーンを入れたアレンジがおしゃれ。
19. 夏の日のドラマ(1999年)
43rdシングル「イエローマン~星の王子様」のカップリング曲。こちらも松田弘さんのボーカル曲(作詞作曲は桑田さん)。60’sポップ〜オールディーズ調の胸キュンな歌メロが素晴らしい。
20. チャイナムーンとビーフン娘(2000年)
46thシングル「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」カップリング曲。原さんがリードボーカルを担当。「そんなヒロシに騙されて」のアップデート版といった趣も(「ヒロシ」の作詞作曲は桑田さんですが)。
21. DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~(2006年)
52ndシングル「DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~」表題曲。桑田さん流フィラデルフィアソウルのオマージュ? タイトルはスリー・ディグリーズの同名曲からの引用でしょう。
22. ダーリン(2007年)
桑田佳祐さんの11thシングル表題曲。フィリーソウルのオマージュに続いてはノーザンソウル? ジャクソン5の初期のヒットシングルをミキサーにかけたようなアレンジが楽しい。
23. すけっちぶっく(2008年)
原さんボーカルを担当した53rdシングル「I AM YOU SINGER」のカップリング曲。「DIRTY OLD MAN」〜「ダーリン」の流れで聴くと余計にソウルフルに聞こえます。キャロル・キング「I Feel the Earth Move」を即座に連想しますが、聴き進めていくと70年代初期のアイズレー・ブラザーズ感も。
24. 潮風のエトランゼ(2009年)
原由子さんの15thシングル「夢をアリガトウ」のカップリング曲。これも「すけっちぶっく」と同路線のソウル色の強い曲。やはり70年代初期のニューソウルに傾倒していた時期のキャロル・キング作品が思い浮かびますが、Original Loveっぽい気もしてきました。
25. ベガ(2011年)
桑田佳祐さんの4thアルバム『MUSICMAN』より。これは桑田さん流のネオソウル〜ディアンジェロ解釈といった印象。こういうアプローチで一枚アルバムを作っていただきたかったです。
次なるサザン選曲企画
以上「シティポップ感覚で聴くサザンオールスターズ」25曲、いかがだったでしょうか? コメントは勢いで書いたので雑な喩えの数々もご容赦いただけますと。
こうしてサザンのディスコグラフィを振り返ってみると、まだまだいろいろな切り口の企画が考えられそうです。たとえばレゲエのリズムを取り入れた曲を集めたプレイリスト、もしくは「ごめんねチャーリー」(レイ・チャールズ)や「いとしのフィート」(リトル・フィート)などに象徴される洋楽オマージュで選曲してもおもしろいかもしれません。いずれまたなにかしらのテーマでトライしてみたいと思います!