【BTS】ジョングク「Seven」サウンド解説〜「完璧な末っ子」の面目躍如

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BTSの最年少メンバー、シンガーのJung Kook(ジョングク)が2023年7月14日にリリースしたシングル「Seven feat. Latto」を主にサウンド面から解説します。

ジョングクの音楽的バックグラウンド

人呼んで「黄金マンネ」(完璧な末っ子)。「Dynamite」(2020年)、「Butter」、「Permission to Dance」(共に2021年)など、全米チャートで1位を記録したBTSの一連の大ヒット曲でトップバッターを務めているJung Kookはグループの実質的なエースと言っていいでしょう。

ヴォーカリストとしては柔らかくてスムーズなテナーボイスが持ち味。影響を受けたシンガーとしてはJustin BieberやJustin Timberlakeを挙げていますが、まさに彼らの系譜を継ぐR&Bを立脚点とするアイドルシンガーです。

Justin Bieber - Peaches ft. Daniel Caesar, Giveon
Justin Timberlake - Take Back the Night (Official Video)

これまでのソロ活動としては、2020年に「Still With You」、2022年に「Stay Alive」と「My You」、そしてワールドカップカタール大会のサウンドトラック収録曲「Dreamers」をリリース。同じ2022年には映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)の主題歌「See You Again」でおなじみCharlie Puthとコラボした「Left and Right」をヒットさせています(全米チャート最高22位)。

Charlie Puth - Left And Right (feat. Jung Kook of BTS) [Official Video]

「Seven」を取り巻く豪華制作陣

Jung Kookはすでに一定のソロ活動を行なってきてはいましたが、この「Seven」が正式なソロデビューシングル。実際、「Seven」はこれまでのソロ曲とはプロジェクトとして桁違いにスケールが大きく、それに見合ったクオリティとヒットポテンシャルも手中にしています。全米チャートを制したJiminの「Like Crazy」同様、会心の一撃と言っていいでしょう。

정국 (Jung Kook) 'Seven (feat. Latto)' Official MV

「Seven」にはふたりのプロデューサー、WattことAndrew WattとCirkutことHenry Walterが携わっています。最近ではMark Ronsonと共に映画『バービー』(2023年)のサウンドトラックで総合プロデューサーを務めていたWattは、ニューヨークに拠点を置く32歳。2021年の第63回グラミー賞で最優秀プロデューサー賞を受賞している売れっ子です。

Wattはもともとソングライターとして活動していましたが、全米1位になったShawn MendesとCamila Cabelloのデュエット「Senorita」(2019年)でプロデューサーとしてもブレイク。以降、Miley Cyrus、Dua Lipa、Post Malone、Maroon 5、Ed Sheeran、The Kid Laroiといった人気アーティストの楽曲を手がけています。先述した「Left and Right」でコラボしたCharlie Puthの「Mother」、Jung Kookが敬愛するJustin Bieber「Hold On」(2021年)などもWattのプロデュース作品です。

Shawn Mendes, Camila Cabello - Señorita

一方のCircutは、カナダはトロント出身の37歳。彼は人気ヒットメーカーのDr. Lukeの右腕として頭角を表し、2013年にKaty Perry「Roar」やMiley Cyrus「Wrecking Ball」を手掛けて本格ブレイク。代表作にはMaroon 5「Sugar」(2014年)や「Girl Like You」(2018年)、The Weekndのアルバム『Starboy』(2016年)、Sam Smith「Unholy」(2022年)などがあります。

Maroon 5 - Sugar (Official Music Video)

また、ソングライティングにはWattとCircutに加えてJon BellionとTheron Thomasが参加。自身もアーティスト活動を行うニューヨーク出身のJonはEminem「The Monster」(2013年)やJustin Bieber『Justice』などに、兄弟R&BデュオのR. Cityとしても活躍するカリブのヴァージン諸島出身のTheronはRihanna「Pour it Up」(2013年)やLizzo「Juice」(2019年)などにソングライターとしてクレジットされています。

Eminem ft. Rihanna - The Monster (Explicit) [Official Video]

韓国ドラマ『100日の郎君様』(2018年)や『マイネーム:偽りと復讐』(2021年)などで知られるハン・ソヒが出演していることでも話題のミュージックビデオについても触れておくと、監督を務めているのはイギリス出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動する映像作家チームのBradley & Pablo(Bradley Bell and Pablo Jones-Soler)。代表的な作品はHarry Stylesの「Watermelon Sugar」(2019年)と「Late Night Talking」(2022年)、Rosalia「Aute Cuture」(2019年)、Lil Nas X「Rodeo」(2019年)などがあります。

Harry Styles - Watermelon Sugar (Official Video)

こんな具合に、「Seven」の制作には現在の欧米ポップミュージック業界最前線で引く手数多のトップクリエイターたちがずらり集結。先ほど「これまでのソロ曲とはプロジェクトとして桁違いにスケールが大きい」と言った意味の一端がおわかりいただけたのではないかと思います。

コラボ相手はグラミー賞新人賞候補

続いては「Seven」のゲストラッパー、Lattoについて。彼女はオハイオ州コロンバスで生まれたのちジョージア州アトランタに移住した1998年12月22日生まれの24歳。現在に至るアトランタのヒップホップ/R&B隆盛の基盤を築いたレジェンドプロデューサー、Jermaine Dupriが手掛けたラップコンテスト番組『The Rap Game』のファーストシーズンに出演すると、初代チャンピオンに輝いて一躍その存在を知らしめました。2016年、当時Miss Mulattoを名乗っていたLattoが18歳のころのことです。

Latto - B*tch From Da Souf (Remix) (Official Video) ft. Saweetie & Trina

その後いくつかのミックステープを発表したのち、2019年にインディーで出したシングル「B*tch from da Souf」がアメリカで200万枚のセールスを超えるヒットを記録。これがきっかけになってメジャーのRCAと契約を交わすと、2020年にアルバム『Queen of da Souf』でメジャーデビューを果たします。

そして、2021年にリリースしたシングル「Big Energy」が全米ポップチャートで3位、R&B/ヒップホップチャートで1位に輝く大ヒットに。同じTom Tom Club「Genius of Love」(1981年)をサンプリングしたMariah Carey「Fantasy」(1995年)とのつながりで彼女がゲスト参加したリミックスヴァージョンも登場しました。

Latto - Big Energy (Official Video)

この「Big Energy」と同曲を収録したセカンドアルバム『777』の大ヒットによって、Lattoは2023年の第65回グラミー賞で最優秀新人賞にノミネート。Ice Spice、GloRilla、Coi Leray、Doechiiなど共に新世代女性ラッパーの代表格として将来を嘱望されています。

再燃中のダンスミュージック「2ステップ」

そんな「Seven」で打ち出されているサウンドは現在絶賛流行中のダンスミュージック、2ステップ。ちょうど「Seven」の一週間前にリリースされたNewJeansの新曲「New Jeans」が2ステップを取り入れていましたが、まさかこの重大な局面でJung Kookまで2ステップで勝負を賭けてこようとは。この「Seven」の登場により、2ステップのリバイバルもいよいよ本格化を迎えることになりそうです。

NewJeans (뉴진스) 'New Jeans' Official MV

改めて2ステップについて簡単に説明しておきましょう。2ステップは1990年代後半から2000年初頭にかけて流行したイギリス生まれのダンスミュージック/クラブミュージック。わかりやすい特徴としては突っかかるようなイレギュラーなビートが挙げられますが、当時日本でもm-flo「come again」(2001年)やCrytstal Kay「Boyfriend Part II」(2002年)などのヒット曲で取り入れられていたのでアラフォー世代にとっては懐かしく感じるかもしれません。

今回の「Seven」のサウンドについては海外のレビューなどで「UKガラージ」と説明されている文章を目にした方もいるかもしれませんが、現在ではUKガラージと2ステップはほぼ同義として使われているようなところがあります(2ステップを取り入れたJimin「Like Crazy」のリミックスのタイトルはまさに「UK Garage Remix」でした)。

Like Crazy (UK Garage Remix)

UKガラージは1990年代前半から中盤にかけてハウスの進化型のダンスミュージックとしてイギリスで誕生しましたが、もともと2ステップはそこから派生したさまざまなサブジャンルのうちのひとつにすぎませんでした。

ところが、この2ステップが1990年代後半にR&Bと融合することにより大衆性を得て一気にメインストリームへと進出。UKガラージから派生した数々のサブジャンルのなかでも特に大きな市民権を獲得します。言わば2ステップが母体であったUKガラージを飲み込むような格好になったわけですが、そういう経緯から次第にUKガラージと2ステップが同じサウンドを指すようになりました。

pinkpantheress - just for me (Official Video)

こうした2000年前後のオリジナルの2ステップに比べて、ロンドンのPinkPanteressが先鞭をつけた近年のリバイバルは女性アーティストが中心になってムーヴメントを形成している傾向にあります。

音楽的にもダンスフロアでの機能性よりもホームリスニングに比重を置いたポップでメロディアスな聴きやすいアレンジが施され、曲の長さもTikTokでの使い勝手の良さを考慮した2分前後のものが中心。まさにこうした潮流を強く意識させるNewJeansの「New Jeans」にしてもトータルで1分49秒しかありません。

「Y2K」のヒット曲に捧げたオマージュ

ここからが「Seven」の重要なポイントになりますが、PinkPanteressやNewJeansによる昨今トレンドのリスナーとの緊密性が高いベッドルームポップ的な2ステップと比較して、Jung Kookの「Seven」は2000年前後に流行したR&B寄りの2ステップの影響が聴き取れます。

具体的には、当時2ステップの流行と共に台頭してきたイギリスのR&Bシンガー、Craig Davidによるヒット曲の数々。彼の出世作になった「Rewind」(1999年)、そして全米チャートで最高15位にランクインする世界的ヒットを記録した「Fill Me In」(2000年)などです。

Craig David - Fill Me In (Official Video)

これは妄想込みの話になりますが、現在2ステップがリバイバルしているなか、この「Seven」はR&B型2ステップのパイオニア的存在であるCraig Davidへのトリビュートの意味合いも込められているのでは、なんて考えていたりします。それは「Seven」の曲調が「Fill Me In」に象徴されるあの時代の2ステップをもろに彷彿させることもそうですが、Craigのヒット曲には全米チャートで最高10位を記録したその名も「7 Days」(2000年)なる曲があるからです。

これがタイトル通り恋人との一週間を歌った内容で、歌詞のコンセプトや月曜日から日曜日までを詠み込んでいくサビのパートなどは見事に「Seven」と重なります(相手への執着心は「Seven」の方がはるかに強いですが)。もし「Seven」がサウンド面で「Fill Me In」を、リリック面で「7 Days」をモチーフにして作られたのだとしたら、このタイミングでのこのトリビュートはリアルタイム世代にとってあまりに胸熱な展開でしょう。

Craig David - 7 Days (Official Video)

それはともかく、Jung Kookがソロデビューシングルというひときわ注目度の高いステージで2ステップを取り入れ、その結果として初登場で全米チャート1位を獲得したことは、今後の2ステップリバイバルの動向に少なくない影響を及ぼすことになるはず。

というのも、2ステップが再燃しているとはいえ本場イギリスはともかくアメリカではまだ大きなヒット曲が生まれていなかった状況下、「Seven」の全米1位は2ステップの流行を大きく後押しすることになる可能性があるからです。それこそCraig Davidの「Fill Me In」と「7 Days」を最後にアメリカでは2ステップの大きなヒットが出ていなかったわけで、「Seven」は2ステップ/UKガラージの歴史においても重要な作品になるかもしれません。

流行のサウンドを踏まえたリミックス展開

トレンドの2ステップを取り入れた「Seven」は、追い打ちをかけるようにしてオリジナル版から3日後の7月17日にリリースしたリミックスバージョン「Summer Mix」でも現在大流行中のジャージークラブのビートを使っていました。

정국 (Jung Kook) 'Seven (feat. Latto) - Summer Mix' Visualizer

「ドッドッ、ドッドッドッ」と1小節にバスドラムが5回打たれるビートパターンが特徴のジャージークラブは、2000年代後半にニュージャージー州ニューアークで誕生して2010年代にクラブシーンで流行したダンスミュージック。2022年にDrake「Sticky」やLil Uzi Vert「Just Wanna Rock」のヒットによって本格的にリバイバルしました。NewJeansの「Ditto」(2022年)のビート、と紹介した方が伝わりやすいかもしれません。

ここ最近HYBE関連アーティストはジャージークラブづいていて、この「Seven (Summer Mix)」のほか、(部分的に導入しているものも含めると)SEVENTEEN「Super」、LE SSERAFIM「Eve, Psyche & the Bluebeard’s Wife」、NewJeans「SuperShy」、TOMORROW X TOGETHER「Do it Like That (Jersey Club Remix)」などでジャージークラブを使っていました。

LE SSERAFIM (르세라핌) ‘이브, 프시케 그리고 푸른 수염의 아내’ OFFICIAL M/V
TXT (투모로우바이투게더), Jonas Brothers 'Do It Like That (Jersey Club Remix)' Official Visualizer

こうしてトレンドのサウンドに一斉に乗っかっていく良い意味での節操のなさはポップミュージックの楽しさのひとつですが、Jung Kookの「Seven」はそんな醍醐味をハイクオリティなサウンドで強烈に打ち出した2023年の気分を代表するヒット曲といえるでしょう。

[슈취타] EP.15 SUGA with 정국
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